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河合香織さんのポエム

ー くもっこ ー

お月さまのおうちで…

読み手:水谷 ケイコ(2022年)

 「空はあんなに高かったっけ?」と、くもっこはポカーンとながめていました。
 空気も爽やかで過ごしやすくなってきました。
 「久しぶりに森のもりっこさんのところへ行ってきます。」
おひさまのぽっこりが、くもっこをほんのり優しく包んでくれます。


 くもっこは暖かくて気持ちよくなり、プワワンプワワン、お昼寝をしながら森のもりっこさんのところに行きました。
 「んう〜、よく寝た。」
背伸びしながらくもっこが見ると、森のフクロウさんがいました。今日は珍しく昼間でも起きているようです。
 「みんなからよく聞いているよ。くもっこちゃん、はじめまして。」
と、フクロウさんが挨拶をすると、くもっこも、
「フクロウさん、はじめまして。」
と言いました。
 フクロウさんは、
「お月さまのおうちで、月うさぎさんがおもちつきをしているの。
行ってみたくはない?くもっこちゃん!」
と言いました。
くもっこは目をランランとさせて、すぐにお家に帰りました。
「おかあちゃん、ただいま!」
「くもっこ、おかえり!今日は早かったねぇ。」
おかあちゃんは、いつものようにフワッとくもっこを抱き寄せながら、フクロウさんから聞いたことを言いました。
そして、
「くもっこ、今夜お月さまのおうちに行く?」
と、言いました。
「えっ!お月さまのおうちに行ってきてもいいの?」
思いがけないおかあちゃんの言葉を聞いて、くもっこの心はキラキラ輝きました。
おとうちゃんにも前から「行っておいで」と言われていたし、今夜はまんまるお月さまのおうちに遊びに行けるのです。
くもっこはいろんな形をしながら、
 ♪ お月さまのおうち
 どんなかなー?
 どんなかなー? ♪
と、歌いました。
 お月さまのおうちから来た黄色いうさぎさんが、ちょこりと頭を下げて、
「くもっこちゃんをお迎えに来ました。
月うさぎのルルと言います。はじめまして。」
くもっこも急いでごあいさつします。
そして、二人はお月さまのおうちへと向かっていきました。
どんどん近づいてきたお月さまのおうちは、とーっても大きくて、くもっこはびっくりしました。
 月うさぎさんが100匹以上もいます。
 「はじめまして、私の名前はくもっこです。どうぞよろしくお願いします。」
くもっこのまわりを月うさぎさんたちが囲んでいて、
「目が回るぅ〜!」
とくもっこが言うと、みんなは大笑い!
 月うさぎさんの母さんが、
「さぁさぁ、今日は何だっけ〜?」
と言いました。
小さい月うさぎのミミちゃんが答えてくれましたが、声が小さくて聞こえません。
 となりにいた心やさしい月うさぎさんが、
「ミミちゃんが『おもちつき』と言っています。」
と、ミミちゃんの代わりに伝えてくれました。
「ミミちゃん、正解!今夜はおもちつきをするよー!みんな並んで並んでー!」
月うさぎさんの母さんたちが、背伸びしながら大きな声で言うのでした。
 くもっこは「ちゃんと並んでいるか見てきて!」と頼まれて、ふわわふわわ見に行くと、
「ぼくが先に並んだ!」
「わたしが先に並んでいたわ!」
と、月うさぎのポポくんとリリちゃんが大さわぎしています。
 くもっこは、
「にらめっこして、まけた方がうしろにいく!いいっ⁈」
と言いました。
 2匹の月うさぎさんは、
 ♪ にらめっこしましょ
 笑うとうしろだよ
 あっぷっぷー! ♪
リリちゃんが、
「わたしの負け、でも楽しかったわ!」
と言うと、
「ぼくも楽しかったよ。こうやってにらめっこをすれば、けんかしないでいいや!」
と、ポポくんも言いました。
「くもっこちゃん、ありがとう!」
 2匹の月うさぎさんは、くもっこに言いました。
 そして、おもちつきが始まりました。
 みんな声を合わせて、歌います。
 ♪ よいしょ!
 おいしいおもち、
 はやく、
 ぺったん!
 たべたい、
 ぺったん!♪
月うさぎの母さんが、答えて歌います。
 ♪ まだまだまだ
 もうちょっと
 がまんしてお、く、れ ♪
何回も繰り返し歌って、やっとおもちができました。
 おもちをムニュムニュ指でつぶす子、びよよよんと伸ばす子、もうパクパク食べている子もいます。
「もう食べているよ!ワハハハハッ!」
月うさぎの母さんたちは笑っています。
 そして「こうやっておもちをお月さまのおうちみたいにまあるくして、さんかくに積むのは、おいしいお米ができますようにとお祈りするためなのよ。」と教えてくれました。
 それを聞いて、月うさぎみんなとくもっこもお祈りするのでした。
 そろそろおひさまのぽっこりが起きる時間です。
 くもっこが地球の大空に帰らなければならない時間が近づいています。
 くもっこは、あずきをおもちに包み込み、パクリ!びよよよょんと食べ、
「んん!おいしくてほっぺがおっこちちゃうわ!」
と言いました。
そして、
「はぁ〜、もう帰らないといけないわ。」
とくもっこがつぶやくと、
「またきてよ、くもっこちゃん。」
と、あの小さい月うさぎのミミちゃんが言いました。
 「くもっこちゃん、また遊ぼうね。」
リリちゃんもそう言って涙ぐみました。
 ちょっとはずかしそうにポポくんも、
「また。」
と言いました。
 くもっこは、お世話になった月うさぎの母さんたちにあいさつしました。

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