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夏目 漱石

「永日小品」より「柿」

読み手:加藤 純子(2011年)

「永日小品」より「柿」

著者:夏目 漱石 読み手:加藤 純子 時間:8分18秒

 喜いちゃんと云う子がいる。滑らかな皮膚と、鮮かな眸を持っているが、頬の色は発育の好い世間の子供のように冴々していない。ちょっと見ると一面に黄色い 心持ちがする。御母さんがあまり可愛がり過ぎて表へ遊びに出さないせいだと、出入りの女髪結が評した事がある。御母さんは束髪の流行る今の世に、昔風の髷 を四日目四日目にきっと結う女で、自分の子を喜いちゃん喜いちゃんと、いつでも、ちゃん付にして呼んでいる。このお母さんの上に、また切下の御祖母さんが いて、その御祖母さんがまた喜いちゃん喜いちゃんと呼んでいる。喜いちゃん御琴の御稽古に行く時間ですよ。喜いちゃんむやみに表へ出て、そこいらの子供と 遊んではいけませんなどと云っている・・・

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