宮沢 賢治 作
読み手:石橋 玲(2013年)
虔十はいつも縄の帯をしめてわらって杜の中や畑の間をゆっくりあるいているのでした。
雨の中の青い藪を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。
けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑うものですから虔十はだんだん笑わないふりをするようになりました。
風がどうと吹いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは虔十はもううれしくてうれしくてひとりでに笑えて仕方ないのを、無理やり大きく口をあき、はあはあ息だけついてごまかしながらいつまでもいつまでもそのぶなの木を見上げて立っているのでした・・・
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