小酒井 不木 作
読み手:二宮 正博(2024年)
一
いまからおよそ百五十年前のことです。英国南部のバスという市で、ある夜盛大な晩餐会が開かれました。
集まったものは、政治家、実業家、医師、軍人など数十人、いわゆるその市およびその付近で、名をあげている人ばかりでありました。当時まだ電燈は発明されておりませんでしたから、いく本かの美しい装飾をほどこした銀色の燭台が、テーブルの上に立て並べられ、皎々たる光のもとにいとも静粛に、食事がすまされました。
食後人々はテーブルをかこんだまま、紅茶をすすりながら、いろいろの話にふけりました。と、いつのまにか、すみの方で議論めいた口調で話すものがありましたので、一同は、言いあわせたように、口をつぐんで、その議論に耳を傾けました・・・
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