宮沢 賢治 作
読み手:なべさん(2025年)
犬
なぜ吠えるのだ 二疋とも
吠えてこつちへかけてくる
(夜明けのひのきは心象のそら)
頭を下げることは犬の常套だ
尾をふることはこはくない
それだのに
なぜさう本気に吠えるのだ
その薄明の二疋の犬
一ぴきは灰色錫
一ぴきの尾は茶の草穂
うしろへまはつてうなつてゐる
わたくしの歩きかたは不正でない
それは犬の中の狼のキメラがこはいのと
もひとつはさしつかへないため
犬は薄明に溶解する
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