小川 未明 作
読み手:加藤 供子(2025年)
三郎は、往来で、犬と遊んでいるうちに、ふいに、自分のかぶっていた帽子をとって、これを犬の頭にかぶせました。
ポチは、目が見えなくなったので、びっくりして、あとずさりをしました。それに、坊ちゃんの大事な帽子をよごしたり、いためたりしては、わるいと思ったので、遠慮するように見えたのであります。
「ポチ、帽子をかぶって、歩くんだよ。」と、三郎は、いいました。
「私は、帽子はいりません。」と、答えるように、ポチは、尾をぴちぴちと振って、帽子を頭の上から落としました。
三郎は、いやがるポチの後を追いかけて、こんどは、無理に帽子を頭からかぶせて、
「おまえに、この帽子をやるよ。」といいました・・・
Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.