小川 未明 作
読み手:坂井 あきこ(2025年)
人々のあまり知らないところであります。そこには、ほとんど、かずかぎりのないほどの、すももの木がうわっていました。そして、春になると、それらのすももの木には、みんな白い花が、雪のふったように咲いたのであります。
その木の下をとおると、いい匂いがして、空の色が見えないまでに、白い花のトンネルとなってしまいました。それは、あまりに白くて、清らかなので、肌が、ひやひやするようにおもわれたのであります。
しかし、ゆけども、ゆけども、白い花のトンネルはつきませんでした。まるで、白い雪の世界をあるいているようなものでした。けれど、雪ではありません。雪は、真っ白でありますが、すももの花は、いくぶん、青みがかっていて、それに、いい匂いがしました・・・
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