中谷 宇吉郎 作
読み手:西村 文江(2025年)
正月のオール讀物に『アメリカの藝者物語』というものを書いたら、お前もだいぶ墮落したと、方々でいわれた。どうも中を讀まないで、題目を新聞廣告で見ただけで、批評されるのだからたまらない。もっともオールなどとは縁の遠い高級な人には、用のない話なのである。
話の内容は、アメリカには、原則として藝者や女給はいないが、その代り、同伴の夫人たちが、藝者の役目をつとめ、巧く座持をしてくれる、という話なのである。
終戰以來十年の間に、待合や温泉宿、それにダンスホール、キャバレーなど、即ち遊興の面での日本の復興はまことに目覺しく、戰前を遙かに凌駕する繁昌ぶりである。そういう方面で、消費された物資と金額とは、優に日本の全電源を開發する量に達しているという話である・・・
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