壺井 栄 作
読み手:坂井 あきこ(2025年)
一
生まれた時から和子はおじいさん子でした。そんな小さい時のことなど、知ろうはずはないのですが、おじいさんの話を聞いていると、まるでおじいさんに育てられたような気がするほど、おじいさんは、和子の小さい時のことを知っていました。和子のことをカ子と呼び、
「カ子が小さい時にのう。」
と語りだすと、きょうだいのない和子は、ひとりっ子のさびしさを忘れて、おじいさんの語るカ子という子供が和子自身ではなく、どこか遠い国のお話の中の子供のようにめずらしかったり、また妹のようになつかしかったりするのでした。和子はさびしい時など、よくおじいさんにおねだりをしました。
「おじいさん、カ子の話、聞かしてよ。」
するとおじいさんは、かならず二つ返事で語りだします・・・
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