田山 録弥 作
読み手:堀口 直子(2025年)
秋は深くなつた。落葉ががら/\と家の周囲を廻つて通る。朝から障子に日が当つて、雀がチヤ/\と鳴いて居る。芭蕉の葉は既に萎れた。
栗の実を拾ひに、競つて朝早く子供等の起きたのはつい此間であつたが、今は落葉が深く積つて、それを掃く音が高く聞える。朝焼火をした火が午後まで消えずに残つて、プス/\と細い煙を立てゝ居ることなどもある。近所の工場の物音も手に取るやうに聞えて、黒い煙が晴れた空にくつきりと靡く。
私の家は林の蔭にある。
風の日には、樹の鳴る音が波のやうに聞える。ことに大きい欅の樹が多いので、普通の林などでは想像されぬやうな遠い高い音がする。大い樹と言ふものは動いて居る時にも、静まつて居る時にも立派なものだなどと私は思ふ・・・
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