織田 作之助 作
読み手:宮松 大輔(2025年)
その男は毎日ヒロポンの十管入を一箱宛買いに来て、顔色が土のようだった。十管入が品切れている時は三管入を三箱買うて行った。
敏子は釣銭を渡しながら、纒めて買えば毎日来る手間もはぶけるのにと思ったが、もともとヒロポンの様な劇薬性の昂奮剤を注射する男なぞ不合理にきまっている。然し敏子の化粧はなぜか煙草屋の娘の様に濃くなった。敏子は二十七歳、出戻って半年になる。
男の顔は来るたび痛々しく痩せて行った・・・
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