織田 作之助 作
読み手:宮松 大輔(2026年)
彼は人気者になら誰とでも会いたがった。しかし、人気者は誰も彼に会おうとしなかった。いうまでもなく彼は一介の無名の市井人だった。
野坂参三なら既にして人気者であり、民主主義の本尊だから、誰とでも会うだろう。彼はわざわざ上京して共産党の本部を訪問した。ところが、党員が出て来ていうのには、
「野坂氏は多忙で誰とも会いません。用件は私が伺いましょう」
用件はなかった・・・
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