小山内 薫 作
読み手:fin(2026年)
私がまだ六つか七つの時分でした。
或日、近所の天神さまにお祭があるので、私は乳母をせびって、一緒にそこへ連れて行ってもらいました。
天神様の境内は大層な人出でした。飴屋が出ています。つぼ焼屋が出ています。切傷の直ぐ癒る膏薬を売っている店があります。見世物には猿芝居、山雀の曲芸、ろくろ首、山男、地獄極楽のからくりなどという、もうこの頃ではたんと見られないものが軒を列べて出ていました。
私は乳母に手を引かれて、あっちこっちと見て歩く内に、ふと社の裏手の明き地に大勢人が集まっているのを見つけました・・・
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