中谷 宇吉郎 作
読み手:柏原 恵理(2026年)
四年ばかり前に、K國手の手で、扁桃腺をとって貰ったことがある。年とってから扁桃腺をとるのは、そう樂なものではないが、何といっても日本の第一人者であるから、手術そのものは極めて巧く行った。
しかしあと三日ばかり、ものを飮みこむ時に、ひどく痛くて、全く閉口した。流動物でも、一口飮みこむことが、すでに大變な難事業であった。鯉みたような恰好に、上を向いて口を大きくあけ、生卵を一つ流し込む。そして一二度息をととのえて、度胸をきめて、エッとばかりに飮みこむのである。ちびちび飮んでは、却って痛いからである。
三日目だったか、まだ依然として痛い・・・
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