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芥川 龍之介

桃太郎

読み手:入江 安希子(2014年)

桃太郎

著者:芥川 龍之介 読み手:入江 安希子 時間:20分8秒

   一

 むかし、むかし、大むかし、ある深い山の奥に大きい桃の木が一本あった。大きいとだけではいい足りないかも知れない。この桃の枝は雲の上にひろがり、こ の桃の根は大地の底の黄泉の国にさえ及んでいた。何でも天地開闢の頃おい、伊弉諾の尊は黄最津平阪に八つの雷を却けるため、桃の実を礫に打ったという、 ――その神代の桃の実はこの木の枝になっていたのである・・・・・・

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