閉じる

閉じる

宮沢 賢治

さるのこしかけ

読み手:入江 安希子(2015年)

さるのこしかけ

著者:宮沢 賢治 読み手:入江 安希子 時間:15分47秒

 楢夫は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
 楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.