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芥川 龍之介

仙人

読み手:三田 朱美(2016年)

仙人

著者:芥川 龍之介 読み手:三田 朱美 時間:11分33秒

 皆さん。
 私は今大阪にいます、ですから大阪の話をしましょう。
 昔、大阪の町へ奉公に来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公に来た男ですから、権助とだけ伝わっています。
 権助は口入れ屋の暖簾をくぐると、煙管を啣えていた番頭に、こう口の世話を頼みました。
「番頭さん。私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」
 番頭は呆気にとられたように、しばらくは口も利かずにいました・・・

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