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寺田 寅彦

天災と国防

読み手:麻中 恒子(2016年)

天災と国防

著者:寺田 寅彦 読み手:麻中 恒子 時間:28分22秒

 「非常時」というなんとなく不気味なしかしはっきりした意味のわかりにくい言葉がはやりだしたのはいつごろからであったか思い出せないが、ただ近来何かしら日本全国土の安寧を脅かす黒雲のようなものが遠い水平線の向こう側からこっそりのぞいているらしいという、言わば取り止めのない悪夢のような不安の陰影が国民全体の意識の底層に揺曳していることは事実である。そうして、その不安の渦巻の回転する中心点はと言えばやはり近き将来に期待される国際的折衝の難関であることはもちろんである。
 そういう不安をさらにあおり立てでもするように、ことしになってからいろいろの天変地異が踵を次いでわが国土を襲い、そうしておびただしい人命と財産を奪ったように見える・・・

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