戻る

戻る

夏目 漱石

「夢十夜」「第十夜」

読み手:入江 亜貴子(2016年)

「夢十夜」「第十夜」

著者:夏目 漱石 読み手:入江 亜貴子 時間:8分40秒

 庄太郎が女に攫われてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせに来た。
 庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。ただ一つの道楽がある。パナマの帽子を被って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来の女の顔を眺めている。そうしてしきりに感心している。そのほかにはこれと云うほどの特色もない。
 あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.