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薄田 泣菫

「茶話」より「男のお産」

読み手:入江 安希子(2016年)

「茶話」より「男のお産」

著者:薄田 泣菫 読み手:入江 安希子 時間:4分3秒

 むかし大森元孝といふ医者があつた。すべて医者といふものは、診断が拙からうが、学問が無からうが、唯病家へ往つて落つき済まして居さへすればそれで良い評判を取る事も出来るものなのだが、不仕合せにもこの元孝は性来ひどい慌て者だつた。
 ある時、松平大学頭の徒士が病気に罹つて招びに来た。元孝は二つ返事で飛んで往つた。そして仔細らしい顔つきで、病人の腹を診てゐたが、一寸小首を傾げて、
「お産後でございますか。」
と医者らしい叮嚀な言葉で訊いた・・・

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