戻る

戻る

夏目 漱石

「夢十夜」「第一夜」

読み手:岡本 茂(2017年)

「夢十夜」「第一夜」

著者:夏目 漱石 読み手:岡本 茂 時間:8分48秒

 こんな夢を見た。
 腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然云った。自分も確にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.