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宇野 浩二

質屋の主人

読み手:松岡 初子(2018年)

質屋の主人

著者:宇野 浩二 読み手:松岡 初子 時間:10分17秒

 最早や昨年のことになるかと思ふが、私はこの雑誌に『質屋の小僧』といふ文章を書いたことがある。すると、一二ヶ月後、私のその文章を見たと云つて、あべこべに以前その質屋の暖簾をくぐつた頃の私の印象を、その『質屋の小僧』が書いたことがある。その頃から一年程たつた今、彼は既に質屋の小僧でなく番頭であつた。名は金井源蔵と云ふ。
 以前、その小僧時代に私がよく世話になつた金井君が、いつの間にか番頭になると共に、文学青年になつて、私のところへ原稿を持つて来るやうになつた因縁を書いたのが、前記私の『質屋の小僧』の大略であるのだが、私がそんな文章を書いたり、彼がそんな応酬の文章を書いたりしたので、その後私たちは一層会ふ機会が多くなつた・・・

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