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夢野 久作

縊死体

読み手:福島 菜摘(2018年)

縊死体

著者:夢野 久作 読み手:福島 菜摘 時間:5分47秒

 どこかの公園のベンチである。
 眼の前には一条の噴水が、夕暮の青空高く高くあがっては落ち、あがっては落ちしている。
 その噴水の音を聞きながら、私は二三枚の夕刊を拡げ散らしている。そうして、どの新聞を見ても、私が探している記事が見当らないことがわかると、私はニッタリと冷笑しながら、ゴシャゴシャに重ねて押し丸めた。
 私が探している記事というのは今から一箇月ばかり前、郊外の或る空家の中で、私に絞め殺された可哀相な下町娘の死体に関する報道であった。
 私は、その娘と深い恋仲になっていたものであるが、或る夕方のこと、その娘が私に会いに来た時の桃割れと振袖姿が、あんまり美し過ぎたので、私は息苦しさに堪えられなくなって、彼女を郊外の××踏切り附近の離れ家に連れ込んだ・・・

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