堀 辰雄 作
読み手:阿蘇 美年子(2018年)
冬
午後、いつものように病人を残して、私はサナトリウムを離れると、収穫に忙しい農夫等の立ち働いている田畑の間を抜けながら、雑木林を越えて、その山の窪みにある人けの絶えた狭い村に下りた後、小さな谿流にかかった吊橋を渡って、その村の対岸にある栗の木の多い低い山へ攀じのぼり、その上方の斜面に腰を下ろした。そこで私は何時間も、明るい、静かな気分で、これから手を着けようとしている物語の構想に耽っていた・・・
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