久生 十蘭 作
読み手:金勝 陽子(2018年)
朝の十時ごろ、俳友の国手石亭が葱とビールをさげてやってきた。
「へんな顔をしていますね。どうしました」
「田阪で池の水を落とすのが耳について眠れない。もう三晩になる」
「あれにはわたしもやられました。池を乾して畑にするんだそうです」
「それはいいが、そのビールはなんだね」
「あい鴨で一杯やろうというのです。尤もあひるはこれからひねりに行くのですが」
田阪のあひるが水門をぬけてきて畑を荒してしようがないから、おびきだしてひねってしまうというはなしなのである・・・
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