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中原 中也

夜汽車の食堂

読み手:伊藤 和(2019年)

夜汽車の食堂

著者:中原 中也 読み手:伊藤 和 時間:3分38秒

 雪の野原の中に、一条のレールがあつて、そのレールのずつと地平線に見えなくなるあたりの空に、大きなお月様がポツカリと出てゐました。レールの片側には、真ッ黒に火で焦がされた、太い木杭が立ち並んでゐて、レールを慰めてゐるやうなのでありました。
 そのレールの上を、今、円筒形の、途方もなく大きい列車が、まるで星に向つて放たれたロケットのやうに、遮二無二走つて行くのでした。
 その列車の食堂は明るくて、その天井は白いロイドで貼つてあり、飴色の電燈は、カツカと明つて燈つてゐました。其処に僕はゐて、お魚フライにレモンの汁をしたたか掛けて、これから食べようとしてゐたのです・・・

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