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薄田 泣菫

「茶話」より「画の催促」

読み手:入江 安希子(2019年)

「茶話」より「画の催促」

著者:薄田 泣菫 読み手:入江 安希子 時間:3分49秒

 流行つ子の画家が容易に絵を描いて呉れないのは、昔も今も同じ事だが、竹内栖鳳氏などになると、頼み込んでから、十年近くなつて今だに描いて貰へないのがある。
 さういふ向は、色々手を代へ品を更へて時機さへあれば絵の催促をするのを忘れない。到来物の粕漬を送つたり、掘立の山の芋を寄こしたりして、その度に一寸絵の事をも書き添へておくが、画家などいふものは忘れつぽいものと見えて、粕漬や山の芋を食べる時には、つい思ひ出しもするが、箸を下に置いてしまふと、今の好物も誰が送つて来たものか、すつかり忘れてゐる。
 画家の胃の腑が当てにならない事を知つた依頼者は、近頃では妙な事を考へ出した・・・

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