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小川 未明

女の魚売り

読み手:宮崎 文子(2019年)

女の魚売り

著者:小川 未明 読み手:宮崎 文子 時間:14分24秒

 ある空の赤い、晩方のことであります。
 海の方から、若い女が、かごの中にたくさんのたいを入れて、てんびん棒でかついで村の中へはいってきました。
「たいは、いりませんか。たいを買ってください。」と、若い女はいって歩きました。
 この村に、一軒の金持ちが住んでいました。その家はすぎの木や、葉の色の黒ずんだ、かしの木などで取り囲まれていました。そして、その広い屋敷の周囲には、土手が築いてあって、その土手へは、だれも登れないように、とげのある、いろいろの木などが植えてありました。
 若い女の魚売りは、その屋敷についている門から、しんとした内へ入ってゆきました。
「たいを買ってください。」と、女はいいました・・・

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