土田 耕平 作
読み手:池戸 美香(2019年)
おほ寒こ寒
山から小僧が
とんでくる……
冬のさむい晩のこと、三郎はおばあさんと二人で、奥座敷のこたつにあたつてゐました。庭の竹やぶが、とき/″\風に吹きたわむ音がして、そのあとは、しんとしづかになります。そして、遠くの方で犬の吠える声がきこえたりするのも、山家の冬らしい気もちであります。大寒小寒の唄は、さういふさむい晩など、おばあさんが口癖のやうに、三郎にうたつてきかせる唄でありました。
「おばあさん、小僧がなぜ山からとんでくるの。」
三郎は、今またおばあさんが口ずさんでゐるのをきいて、かう云つてたづねました。
「山は寒うなつても、こたつもなければお家もない。それでとんでくるのだらうよ。」・・・
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