壺井 栄 作
読み手:海老 実穂(2021年)
赤ん坊の名を右文といった。生後一年で孤児になり、私の家へくることになった。赤ん坊のひいおばあさんにあたる人からこの話をもちこまれる前に、私たち夫婦はもうその覚悟でいたのだが、いよいよとなると、さまざまな難問題が湧いてきた。しかし、だからといって肩をはずすわけにも行くまいと考えられたので、とにかく引き取ろうということになった。その中どこからか救いの手がのびてくるだろうという空だのみもあったし、また一方では、赤ん坊という新鮮な存在が、もうとっくに初老をすぎた私たちの、沈滞した家庭生活を若返らせもしようかという、とてつもない希望も抱かせられた・・・
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