坂口 安吾 作
読み手:水野 久美子(2021年)
昔、池袋にすんでいたころ、小学校の生徒に頻りに敬礼されて、その界隈を遠廻りに敬遠して歩かねばならなくなったが、僕に似た先生がいたに相違ない。
戦争中、神田の創元社へよく遊びにでかけたが、日大生に時々敬礼された。何先生が僕に似ているのか気にかかった。
まだ焼けて幾日にもならぬ高田馬場駅で、夜であったが、軍服の青年(将校らしい)に挨拶され、第二高等学院の何々先生ではありませんか、とこれは明らかに名前を言われたのだが、忘れてしまった・・・
Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.