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新美 南吉

仔牛

読み手:都築 洋子(2021年)

仔牛

著者:新美 南吉 読み手:都築 洋子 時間:3分57秒

 仔牛が ある 日 お父さん牛と お母さん牛の ところへ いつて、
「父ちやん 母ちやん、あたい 體の 中が むぢゆむぢゆすんの。」と いひました。お父さん牛も お母さん牛も すつかり よろこんで よだれを たらしました。そして お母さん牛が いひました。
「坊や その むづむづするのはね、今に 坊やの 體から 何かゞ 生えて くるのよ、さあ それでは、あの 丘の 南の なの花畑(ばたけ)の 中へ はいつて、ぢつと すはつて ゐなさい、何か 生えて くるまで 待つて ゐなさいね。」と いひきかせて、仔牛を 一人きり 送つて やりました。
 仔牛が いつて しまふと お母さん牛は むねを おどらせながら お父さん牛に いひました・・・

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