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小泉 八雲  大谷 正信

蠅のはなし

読み手:水谷 ケイコ(2021年)

蠅のはなし

著者:小泉 八雲/大谷 正信 訳 読み手:水谷 ケイコ 時間:7分59秒

 二百年ばかり前に、京都に飾屋九兵衞という商人が居た。店は島原道の少し南の、寺町通という町にあった。下女に――若狭の国生れの――玉というが居た。
 玉は九兵衞夫婦に親切に待遇されていて、誠に二人を好いているように見えていた。が、玉は他の女の子のように綺麗な著物を著ようとはしないで、休暇を貰うと、美しい著物を数敷貰っていながら、いつも仕事著を著て出るのであった。五年ばかり九兵衞に奉公してからのこと、ある日九兵衞は、どうして身綺麗にしようと骨を折らぬのかと彼女に訊ねた・・・

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