太宰 治 作
読み手:アン荻野(2022年)
義務の遂行とは、並たいていの事では無い。けれども、やらなければならぬ。なぜ生きてゐるか。なぜ文章を書くか。いまの私にとつて、それは義務の遂行の爲であります、と答へるより他は無い。金の爲に書いてゐるのでは無いやうだ。快樂の爲に生きてゐるのでも無いやうだ。先日も、野道をひとりで歩きながら、ふと考へた。「愛といふのも、結局は義務の遂行のことでは無いのか。」
はつきり言ふと、私は、いま五枚の隨筆を書くのは、非常な苦痛なのである。十日も前から、何を書いたらいいのか考へてゐた・・・
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