読み手:川村 ゆかり(2022年) |
くもっこの部屋の窓が、ガタガタ鳴っています。
「だ〜れ〜?こんな時間に、ファ〜、起こすのは、ファ〜」
くもっこが眠たそうな顔で窓に近づいてみると、あの強い風のひこうきさんでした。
「おはよう、くもっこちゃん。」
強い風のひこうきさんが小さく言いました。
「強い風のひこうきさん、おはよう。朝早くからなんのよう?」
くもっこは、小さいころにおかあちゃんが編んでくれたあったかい雲のマフラーを巻いて外に出ました。
外はひんやりとした空気です。
「だから強い風のひこうきさんがはしゃいでいたのね。」と、くもっこはつぶやきました。
いつものようにくもっこがひなたぼっこしながら、ぷわわりん、ぷわわりん行くと、
「あれっ?!森のもりっこさんが葉っぱの赤いドレスを着ているみたい‼︎」
思わずきれいな景色にみとれて、くもっこはぽかんとながめていました。
チョロロ、チョロロ、走っているのは、子リスさんと野ねずみさんたちでしょうか。
くもっこは、いったい何をしているのか気になってしかたがなくて、仲良しになった子リスさんに聞いてみました。
「子リスさん、こんにちは。何をしているの?」
子リスさんは、
「くもっこちゃん、こんにちは。何をしているのかって?!森のごちそうを探しているのさ!」
と答えました。
♪ ごちそう どこだ
あっちかなー?
チョロロ
こっちかなー?
チョロロ ♪
歌いながら、子リスさんと野ねずみさんたちは、ほっぺのポケットにどんぐりや木の実を詰め込みます。ポケットがいっぱいなると、土のおうちにどんぐりや木の実を運んで、また探しに行きます。それを何回も繰り返します。
こうして、森のもりっこさんの長い雪休みに入るのです。
くもっこは、前にも行ったことがある小さい病院に行きました。
3人の女の子に、
「こんにちは、覚えている?」
と言うと、3人はにこりと微笑みながら、
「こんにちは、うん、おぼえているよ!くもっこちゃんでしょう!」
と、答えました。
「ねぇ、みんな、今何をしているの?」
とくもっこが聞くと、
「12月25日はイエス・キリストさまのお誕生日で『クリスマス』という日なんだって、看護師さんが言ってたの。だから、お祝いのクリスマス会のじゅんびをしているのよ。」
と、一人の女の子が言いました。
それを聞いたくもっこは、おうちでもクリスマス会をやりたいなぁ♪と、ふわわふわわ帰りました。
「ただいま、おかあちゃん。」
「おかえり、くもっこ。」
くもっこはすぐにおかあちゃんに話しました。
「ねぇ、おかあちゃん、前にも行ったかわいい病院の子どもたちに会ってきたよ。その子たちがね、クリスマス会をするんだって!うちでもクリスマス会をやりたいなぁ♪」
くもっこの目がランランとしているので、おかあちゃんはもうとっくにお見通しでした。
「じゃあ、やろうか!カレンダーを持ってきて!」
と、おかあちゃんは言いました。
くもっこがおかあちゃんの言うとおりにカレンダーを持ってきて渡すと、
「12月25日だね?」
と、おかあちゃんはちらりとくもっこのほうを見て、サンタさんとケーキの絵を描きました。
「ほら、分かりやすくなったでしょう?」
おかあちゃんのかわいい絵を見て、くもっこが
「うん、そうだね!これなら、くもりんにも分かるんじゃない?」
と言うと、おかあちゃんは、
「んん??それはどうかな〜?!」と、目をそらし笑いをこらえました。
その次の日に、おかあちゃんはくもっこたちに
「サンタのおじいさんへのお手紙は?」
と聞きました。
「サンタのおじいさん〜?」
くもっこたちには何のことかわかりません。
「くもみん、くもたん、くもっこ、おいで。サンタのおじいさんはね、世界中の子どもたちにプレゼントを贈っているのよ。真っ赤なお鼻のトナカイさんにソリを引っ張ってもらってねっ!みんなも欲しいものをお手紙に書くといいんだよ。」
と、おかあちゃんが教えてくれました。
みんなはふんわりとやさしい気持ちになりました。
くもりんはおかあちゃんに抱かれて微笑んでいます。
くもみんたちは、さっそくサンタのおじいさんにお手紙を書き始めました。
ふたごの姉のくもみんは、
「サンタのおじいさんへ
みんなの笑顔がほしいです。
雲のくもみんより」
ふたごの妹のくもたんは、
「サンタのおじいさんへ
みんなのやさしい心がほしいです。
雲のくもたんより」
くもっこは
「サンタのおじいさんへ
おとうさんやおかあさんがいないこどもにも、
プレゼントを贈ってほしいです。
雲のくもっこより」
赤ん坊のくもりんは、サンタのおじいさんのお顔を描きました。
サンタのおじいさんにお手紙が書けたので、くもみんのおなかにくもたんとくもっこが入って、強い風のひこうきさんと一緒に、ヒューヒュー、雲の郵便ポストのところへ行きました。
そのころおかあちゃんは、トントン、グツグツ、ジュージュー!、雲のカレーライスと雲のハンバーグを作って、くもみんとおとうちゃんを今か今かと待っていました。
「あっ、帰ってきた!
おかえり。」
「ただいま!」
おとうちゃんの背中に乗ってくもみんたちが帰ってきました。
ひょっこり顔をのぞかせて、
「おなかがすいたよぉ。おかあちゃん、今日の夕飯は、クンクン、カレーだね!!」
みんなが声をそろえて言うと、おかあちゃんが笑顔になりました。
「やったーっ!」
♪ 今日はカレー!
カレー!
今日はハンバーグ!
ハンバーグ! ♪
家族みんなで歌った後、
「いただきます。」
4姉妹はカレーをペロリ、ハンバーグをペロリと食べながら、目がとろ〜りとなってきました。
「ごちそうさまでした。
おとうちゃん、おかあちゃん、
おやすみなさい。ファ〜」
みんな、ふんわりとした雲のふとんにコロリン!
そのまま眠ってしまったのでした。
数日後の12月24日、おかあちゃんと4姉妹はクリスマスケーキを作ろうと張り切っています。
「まずは何をするんだっけ?くもっこ、分かるかな?」
「スポンジを作る!」
「ピッポン!ピッポン!ピッポーン!大当たり!!」
スポンジ作りが始まりました。
バターを溶かす係はくもりんです。スポンジの生地を作って焼くのはくもみんとくもたんです。雲でクリームを作るのはくもっこです。
そして、みんなでワイワイ飾りつけをして、クリスマスケーキができました。
「あ!おとうちゃんが帰ってきたよ!みんなでかくれていましょうか。」
と、おかあちゃんが言いました。
何も知らないおとうちゃんは、
「ただいま!みんな〜、あれ?」
だれもいなくて、おとうちゃんが心配になってきたとき、みんながプク!プク!プク!プク!プク!と顔をのぞかせました。
「な〜んだね、おかあちゃんまで!」
そう言いながらおとうちゃんが台所に行くと、かわいいサンタのおじいさんのクリスマスケーキが置かれていました。
「これは、み〜んなで協力して作ったのかい?」
と、おとうちゃんが聞くと、
「そうなの!わたしたちが作ったんだよ!」
と、4姉妹が答えました。
おかあちゃんがクリスマスケーキをシュシュと切りました。
「召し上がれ。」
「いただきます。」
みんなあーんと食べた瞬間に、
「んー!おいしい!」
こうして、楽しかったクリスマス会が終わりました。
4姉妹には、きっとサンタのおじいさんから大切なプレゼントが送られてきたことでしょう。