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斎藤 茂吉

曼珠沙華

読み手:小川 幸香(2012年)

曼珠沙華

著者:斎藤 茂吉 読み手:小川 幸香 時間:3分15秒

 曼珠沙華は、紅い花が群生して、列をなして咲くことが多いので特に具合の好いものである。一体この花は、青い葉が無くて、茎のうえにずぼりと紅い特有の花 を付けているので、渋味とか寂びとか幽玄とかいう、一部の日本人の好尚からいうと合わないところがある。そういう趣味からいうと、蔟生している青い葉の中 から、見えるか見えないくらいにあの紅い花を咲かせたいのであろうが、あの花はそんなことはせずに、冬から春にかけて青々としてあった葉を無くしてしま い、直接法に無遠慮にあの紅い花を咲かせている。そういう点が私にはいかにも愛らしい。勿体ぶりの完成でなくて、不得要領のうちに強い色を映出しているの は、寧ろ異国的であると謂うことも出来る・・・

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