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芥川 龍之介

漱石山房の冬

読み手:小林 きく江(2022年)

漱石山房の冬

著者:芥川 龍之介 読み手:小林 きく江 時間:8分38秒

 わたしは年少のW君と、旧友のMに案内されながら、久しぶりに先生の書斎へはひつた。
 書斎は此処へ建て直つた後、すつかり日当りが悪くなつた。それから支那の五羽鶴の毯も何時の間にか大分色がさめた。最後にもとの茶の間との境、更紗の唐紙のあつた所も、今は先生の写真のある仏壇に形を変へてゐた。
 しかしその外は不相変である。洋書のつまつた書棚もある。「無絃琴」の額もある。先生が毎日原稿を書いた、小さい紫檀の机もある。瓦斯煖炉もある。屏風もある・・・

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