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畑中 武夫

太陽を呑む赤い老星の秘密

読み手:菅野 秀之(2023年)

太陽を呑む赤い老星の秘密

著者:畑中 武夫 読み手:菅野 秀之 時間:10分42秒

 そろそろ夏が来る。
 夏の空の星で、ぼくが一番なつかしいのは、さそり座とその主星アンタレスである。
 中学初年のころ、「子供の科学」や「科学画報」の星座案内をたよりに、熊野川の川口近くの河原に立ってこの星座をながめた。
 アンタレスは赤い星である。アンタレスの名は、「火星の敵」という意味だそうである。赤い星、火星に対抗するほど赤味をおびた、そして明るい星ということであろう。
 アンタレスはさそりの心臓である。向って右、つまり西の方に巨大なさそりの爪がある。アンタレスから左下にならぶ星は、ゆるい曲線でSの字の下半分を書いて、いかにもさそりの尾を想わせる・・・

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