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木内 高音

水菓子屋の要吉

読み手:まあき、マナミン、ジョン酒巻(2023年)

水菓子屋の要吉

著者:木内 高音 読み手:まあき、マナミン、ジョン酒巻 時間:19分12秒

   一

 要吉は、東京の山の手にある、ある盛り場の水菓子屋の小僧さんです。要吉は、半年ばかり前にいなかからでてきたのです。
 要吉の仕事の第一は、毎朝、まっさきに起きて、表の重たい雨戸をくりあけると、年上の番頭さんを手伝って、店さきへもちだしたえんだいの上に、いろんなくだものを、きれいに、かざりたてることでした。それがすむと、番頭さんがはたきをかけてまわるあとから要吉は、じょろで、水をまいて歩くのでした。ろう細工のようなりんごや、青い葉の上にならべられた赤いいちごなどが、細い水玉をつけてきらきらと輝きます。要吉は、すがすがしい気持で、それらをながめながら、店さきの敷石の上を、きれいにはききよめるのでした・・・

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