新美 南吉 作 狐読み手:水谷 ケイコ(2023年) |
一
月夜に七人の子供が歩いておりました。
大きい子供も小さい子供もまじっておりました。
月は、上から照らしておりました。子供たちの影は短かく地べたにうつりました。
子供たちはじぶんじぶんの影を見て、ずいぶん大頭で、足が短いなあと思いました。
そこで、おかしくなって、笑い出す子もありました。あまりかっこうがよくないので二、三歩はしって見る子もありました。
こんな月夜には、子供たちは何か夢みたいなことを考えがちでありました。
子供たちは小さい村から、半里ばかりはなれた本郷へ、夜のお祭を見にゆくところでした。
切通しをのぼると、かそかな春の夜風にのって、ひゅうひゃらりゃりゃと笛の音が聞えて来ました・・・