閉じる

閉じる

新美 南吉

読み手:水谷 ケイコ(2023年)

著者:新美 南吉 読み手:水谷 ケイコ 時間:26分31秒

   一

 月夜に七人の子供が歩いておりました。
 大きい子供も小さい子供もまじっておりました。
 月は、上から照らしておりました。子供たちの影は短かく地べたにうつりました。
 子供たちはじぶんじぶんの影を見て、ずいぶん大頭で、足が短いなあと思いました。
 そこで、おかしくなって、笑い出す子もありました。あまりかっこうがよくないので二、三歩はしって見る子もありました。
 こんな月夜には、子供たちは何か夢みたいなことを考えがちでありました。
 子供たちは小さい村から、半里ばかりはなれた本郷へ、夜のお祭を見にゆくところでした。
 切通しをのぼると、かそかな春の夜風にのって、ひゅうひゃらりゃりゃと笛の音が聞えて来ました・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.