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中島 敦

セトナ皇子(仮題)

読み手:水野 久美子(2023年)

セトナ皇子(仮題)

著者:中島 敦 読み手:水野 久美子 時間:8分39秒

 メムフィスなるプタの神殿に仕うる書記生兼図案家、常にウシマレス大王に変らざる忠誠を捧ぐる臣、メリテンサ。謹んで之を記す。この物語の真実なることを、あかしし給う神々の御名は、鷹神ハトル、鶴神トト、狼神アヌビス、乳房豊かなる河馬神アピトエリス。

 百合の国上埃及の王にして、蜂の国下埃及の王、アモン・ラーの化身、輝けるテーベの主、ウシマレス大王の一子セトナ皇子は、夙に聡慧の誉れが高い。八歳の時、彼は神々の系譜を論じて宮廷の博士共を驚かせた・・・

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