閉じる

閉じる

夢野 久作

豚と猪

読み手:鈴木 百合子(2023年)

豚と猪

著者:夢野 久作 読み手:鈴木 百合子 時間:1分14秒

 豚が猪に向って自慢をしました。
「私ぐらい結構な身分はない。食べる事から寝る事まですっかり人間に世話をして貰って、御馳走はイヤと言う程たべるからこんなにふとっている。ひとと喧嘩をしなくてもいいから牙なんぞは入り用がない。私とお前さんとは親類だそうだが、おなじ親類でもこんなに身分が違うものか」
 猪はこれを聞くと笑いました。
「人間と言うものはただでいつまでも御馳走を食わせて置くような親切なものじゃないよ。ひとの厄介になって威張るものは今にきっと罰が当るから見ておいで」
 猪の言った事はとうとう本当になりました。豚は間もなく人間に殺されて食われてしまいました。

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.