閉じる

閉じる

佐藤 春夫

あじさい

読み手:土屋 由美子(2023年)

あじさい

著者:佐藤 春夫 読み手:土屋 由美子 時間:8分3秒

 ――あの人があんなふうにして不意に死んだのでなかったら、仮にまあ長い患のあとででもなくなったのであったら、きっと、あなたと私とのことを、たとえばいいとか決していけないとか、何かしらともかくもはっきりと言い置いたろう……わたしはどうもそんな気がするのです。でも、あなたがあれから七年も経つのにどうして今日までひとりでいらっしゃるか、またわたしがどうして時々お説教を聴きに出かけたりするような気持になったか、そのわけをあの人は、口に出しては言わなかったけれどちゃんと知ってはいたのですものね。それならばこそ、私を一そうやさしくもしたのでしょう・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.