夏目 漱石 作
読み手:上田 あゆみ(2023年)
十一
ある奥さんがある女の人を私に紹介した。
「何か書いたものを見ていただきたいのだそうでございます」
私は奥さんのこの言葉から、頭の中でいろいろの事を考えさせられた。今まで私の所へ自分の書いたものを読んでくれと云って来たものは何人となくある。その中には原稿紙の厚さで、一寸または二寸ぐらいの嵩になる大部のものも交っていた。それを私は時間の都合の許す限りなるべく読んだ・・・
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