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ハンス・クリスチャン・アンデルセン  矢崎 源九郎

絵のない絵本
第三夜~第五夜

読み手:野中 美木子(2024年)

絵のない絵本 第三夜~第五夜

著者:ハンス・クリスチャン・アンデルセン/矢崎 源九郎 訳 読み手:野中 美木子 時間:14分26秒

   第三夜

「ここのすぐ近くの、せまい小路で――そこはとてもせまいので、わたしは家の壁にそって、ほんの一分間しか光をすべらせることができません。でもその一分間に、そこに動いている世間を知るのに十分なものを見るのですが――わたしは、ひとりの女を見ました。十六年前には、この女はまだ子供でした。そして、田舎の、古い牧師の家の庭で遊んでいたのでした。バラの生垣は古くなって、もう花ざかりをすぎていましたが、道の外まで生いしげって、長い枝をリンゴの木立の中までのばしていました。まだあちこちに咲きのこっている花もありましたが、花の女王にふさわしいほど美しくはありませんでした・・・

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