グリム兄弟 作 矢崎 源九郎 訳 麦の ほ読み手:堀口 直子(2024年) |
むかし むかし、神さまが、まだ じぶんで、この世の中を、あるきまわっていらっしゃったころの おはなしです。
そのころは、こくもつが、今よりも ずっとずっと よく みのりました。麦のほも、五十や六十 ばかりではありません。四百も五百も ついていました。なにしろ、くきには、麦のつぶが、上から下まで びっしり ついていたのです。くきが ながければながいほど、それだけ、麦のほも ながかったのです。
ところが、人間というものは、あんまり ものがたくさんあると、神さまが おめぐみをくださることも、つい わすれてしまいます。ありがたいとも おもわなくなって、いいかげんな かるはずみなことをしてしまいます。
ある日のことです。女の人が、子どもをつれて、麦ばたけのそばを とおりかかりました・・・