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宮沢 賢治 作
読み手:齋藤 こまり(2024年)
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雲の信号
あゝいゝな せいせいするな 風が吹くし 農具はぴかぴか光つてゐるし 山はぼんやり 岩頸だつて岩鐘だつて みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ そのとき雲の信号は もう青白い春の 禁慾のそら高く掲げられてゐた 山はぼんやり きつと四本杉には 今夜は雁もおりてくる
(一九二二、五、一〇)