相馬 御風 作 道ひらく読み手:成 文佳(2024年) |
この二三日真黒なシマキ雲が時々海の方から吹き上げられて来て、すさまじい突風と共に霰となつて私達を脅かす。一しきりそれが過ぎ去ると、頭の上の空の一ところがケロリと晴れた青空と日の光を見せるのであるが、すぐに又真黒な雲が吹き上げられて来る。いよ/\冬がやつて来たのだ。
僅の晴間に二階の窓から山の方を見ると、すぐそこまでもう真白になつてゐる。山奥の村々はとうにもう雪に見舞はれてゐることであらう。
私の庭では淡紅色の山茶花がいつの間にか散つてしまつて、花片が濡れた地面に泥まみれになつてあちこちに散らばつてゐる。玄関脇の八ツ手の花も苞をぬいでゐる・・・