小川 未明 作 母犬読み手:野口 良子(2025年) |
どこから、追われてきたのか、あまり大きくない雌犬がありました。全身の毛が黒く、顔だけが白くて、きつねかさるに似て、形は、かわいげがないというよりは、なんだか気味悪い気がしたのであります。だから子供たちは、この犬を見ると、石を拾って投げつけたり、なにもしないのに、追いかけたりしました。犬はますますおどおどとして、人の顔を見れば逃げるようになりました。
ペスやポチは、みんなからかわいがられているのに、なぜ、この犬だけ、みんなからきらわれるのだろうかと、敏ちゃんは、ふと、犬を見たときに考えたのでした。自分だって、このあわれな犬をいじめたことがあるのですが、考えると、わるいことをしたような気がしたのでした・・・