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宮沢 賢治

春と修羅 電車

読み手:イトー ゲンヤ(2025年)

春と修羅 電車

著者:宮沢 賢治 読み手:イトー ゲンヤ 時間:1分23秒

 電車

トンネルへはひるのでつけた電燈ぢやないのです
車掌がほんのおもしろまぎれにつけたのです
こんな豆ばたけの風のなかで

 なあに 山火事でござんせう
 なあに 山火事でござんせう
 あんまり大きござんすから
 はてな 向ふの光るあれは雲ですな
 木きつてゐますな
 いゝえ やつぱり山火事でござんせう

おい きさま
日本の萱の野原をゆくビクトルカランザの配下
帽子が風にとられるぞ
こんどは青い稗を行く貧弱カランザの末輩
きさまの馬はもう汗でぬれてゐる

(一九二二、八、一七)

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